「Shh…」0日目
ゼブ市内の語学学校に到着。ここで3ヶ月を過ごしたのち、北米に2ヶ月滞在する予定だ。英語初心者には、ワンツーマン授業が多いフィリピンが良いと進められて、ここに決めた。学校の寮には300人近くが暮らしている。私は三人部屋の予定だ。
学校に到着したのは、22:00を超えていた。水や歯ブラシを渡され、特に説明もないまま三人部屋に到着。部屋の扉を開けると、すでにライトが消されており、女の子が髪を乾かしている。
ルームメイトは韓国人の大学生が2人。
ティアラとゴールドと名乗った。(語学学校ではイングリッシュネームという呼びやすい名前で呼ぶのが通例らしい)
どうやら二人は同時期に来たこともあり、仲が良さそうだ。
ティアラは19歳。可愛らしい雰囲気で明るい。
ゴールドは21歳。大人っぽい、聡明な雰囲気だ。
二人はかなり流暢な英語で部屋の説明をしてくれた。シャンプーを貸してくれ、いろいろ聞いてくれる。
が、私は名前くらいしか言えなかった。昔好きだった韓国人俳優の名前をあげたが、反応は薄め。どうやら世代がかなりちがったようだ。
気まずくなり、寮のロビーにおりて、家族に到着連絡をするなどして20分ほど時間を潰す。これで共同生活は可能なのか…
部屋にもどると、ちょうどゴールドがベランダからでてきた。どうやら電話をしていたようだ。私は冷房をさげたかったので、声をかけようとした瞬間、
ゴールドが号泣しだした。
ええっ
何が…?!
するとティアラが抱きしめながらゴールドを韓国語で慰めている。
「わ、ワットハプン…?
と辿々しい英語で聞くと
「Shh…」
とティアラが唇に指を当てた。
ここは何も聞かない方がいいのか。ロビーに引き返し、ツイッターを眺める。が、フィリピンはWi-Fiが
壊滅的に弱いようで、5時間前くらいの更新で止まっている。
もうみたツイートを復習して、時間を潰す。めちゃくちゃ日本人に話しかけたくて
ロビーに座っていた日本人ぽい生徒に「日本人ですか?」と話しかける。
「そうだよ〜。New Student?」
「そうなんです!!なんかルームメイトが取り込み中で入れなくて」
「ルームメイト何人?」
「韓国人が二人ですね」
「あ〜それは私的にはハズレだね」
「何ヶ月くらいいらっしゃるんですか?」
「2ヶ月だよ」
「英語話せるようになりました?!」
「ならないよ」
前途が不安になりながら部屋に戻ると、ゴールドがシャワールームに入っていていなかった。
心配そうな顔をした私にティアラが「It’s OK」と声をかける。
この調子でやっていけるのか。
不安になりながら、明日のレベル分けテストに向けて眠る。